
第18回メディア・ユニバーサルデザインコンペティションにて経済産業大臣賞受賞
全日本印刷工業組合連合会主催「第18回メディア・ユニバーサルデザインコンペティション」において、弊社制作の「“鑑賞”から“体験”へ、進化する視覚障がい者向け『手でみる絵画 三部作(2.5D ART Printing)』」が、最高位の「経済産業大臣賞」を受賞しました。
本コンペティションは、高齢者、障がい者、子ども、外国人など、すべての人に優しい「見やすさ」「伝わりやすさ」をテーマにユニバーサルデザインの考え方を取り入れた作品を募集するものです。
今回の受賞は、弊社の技術力や発想、より多くの人に伝わる情報を提供する「ユニバーサルデザインへの取り組み」が評価された結果と受け止めております。
この賞をいただいたことを励みに、引き続き「誰もが使いやすいデザイン」の実現を目指してまいります。今後ともご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
全日本印刷工業組合連合会公式サイト メディア・ユニバーサルデザイン事業
■ 『手でみる絵画 三部作』の制作に至った経緯
今回の作品は、目の不自由な方に絵画を楽しんでもらうために、それぞれ異なる手法で制作されました。このプロジェクトは愛媛県立美術館と共同で、視覚障害者に触覚体験を通じて芸術を鑑賞する新しい方法を提供することを目的としています。
第一弾『手でみる絵画(アンドレ・ボナール嬢の肖像 画家の妹)』
第一弾の作品は絵画を構成要素に分解しました。重なり合って見えにくい部分を再現し、各構成要素にテクスチャや触覚要素を個別に追加しました。これにより、奥行きと遠近感に基づいて各部分が独立し、視覚障害者が触覚を通じて芸術をより深く理解できるようになります。
第二弾『手でみる絵画(共通する形をさがしてみよう/杉浦非水)』
第二弾はアーティストの特徴である「スパイラル」を取り上げ、4つの異なる絵画を楽しむことができます。絵画を触って、作者の表現方法やデザインの共通点を楽しんでもらい、コミュニケーションを促します。
第三弾『手でみる絵画(真鍋博の東京自然紀行)』
第三弾は絵画を触るだけでなく、「自分だけの絵画を作る」ゲームが含まれており、参加者は元の絵画を触った後、磁気部品を再配置して独自の芸術作品を作ることができます。これらの作品は実際に視覚障がい者の方々に試していただき、ご意見を取り入れて作られました。台紙の素材やサイズ、レイアウト、フォントの大きさなども考慮されています。
■ 製作する上での工夫や苦労した点
単に1枚の絵画に凹凸加工を施しただけでは、目の不自由な方に絵の奥行(遠近感)を伝えることが難しく、絵画全体を理解できないことが分りました。その課題を解決するために取り組んだのが、1枚の絵画の要素を分解することです。絵を一番奥から“背景”、“果物かごを持った女性”、“犬”の3要素に分解し、それぞれの配置や凹凸、感触などを意識した表現を心掛け製作しました。絵画を分解することで、要素が重なった部分には、イメージを創造し付け足すことで、輪郭が捉えられ像を結び、1枚の絵として成立し、触って理解できる作品となりました。視覚障がい者の方々にも何度も試していただき、ご意見を元に製作しました。
■ クライアントからの声
愛媛県美術館では、「みることを考える」プロジェクトを始め、目の見える人と見えない人が一緒に美術鑑賞を楽しむための取り組みを行っています。その一環として、手づくりの触図を作成し、視覚障がい者との鑑賞に活用しています。佐川印刷さんの協力を得て、2.5Dリアルプリンティングを使用して作品を3つのレイヤーに分解した触図を制作しました。今回は、杉浦非水と真鍋博の作品の触図を作成しました。非水の作品ではデザインの特徴が捉えられる4つの作品を選びました。真鍋の作品では、写真と手描き部分を分けた触図や、マグネットで着脱できるタイプの触図を作成しました。視覚障がい者の方にも触図を体験していただきながら制作を進めました。2.5Dリアルプリンティングを使用した触図の展開が広がりました。
『手でみる絵画 三部作』で用いた印刷技術 2.5D ART Printing は、平面に凹凸を生み出す特殊なプリント加工で、独自の“質感”を生み出す印刷によるアート技法です。
感性を刺激する 2.5D ART Printing 公式サイト
※『2.5Dリアルプリンティング』は弊社が所有している登録商標です。
(2025年1月17日)
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